遺伝子の中の龍

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『遺伝子の中の龍』とはいくりによるWeb漫画である。『週刊ヤングVIP』にて2019年8月12日より連載。


遺伝子の中の龍
作者名 いくり
掲載誌 週刊ヤングVIP
概要 戦争、バトル、シリアス、SF
掲載期間 2019/8/12〜連載中
サイトURL https://saquasohuh.web.fc2.com/index.html



概要

毒の雨に汚染された大地で二つの民族間の戦争に巻き込まれた少女の物語を、宗教対立と超科学を交えた壮大なストーリーで描く。輪廻、転生といった非科学的事象を多く扱うが、ジャンルとしてはファンタジーではなくれっきとしたSF作品である。
コピー用紙、鉛筆、サインペン、ボールペン(ジェットストリーム)によるアナログ作画で、WEB漫画作品では珍しく、850px×600px程度の横長原稿で構成されている。原作は作者が過去に執筆した小説作品であり、内容を加筆修正し漫画版としている。漫画作品としては処女作であり、原稿作成にあたり「マンガの描き方(著:手塚治虫)」を参考にしている。コメント返信機能は臨時、緊急の場合を除いて使用されず、返信専用ページにて前回更新時のコメント分を次回更新時に返信するという形式を採っている。基本的に1コメントにつき1返信だが、連投コメントの場合、纏めて返信する場合もある。コメント返信用画像には本編の台詞差し替えの他、専用に描き下ろされたものが存在する。
作中の登場人物や地名の多くは漢字表記が使われているが、読み方が特殊なものが多く、当時作者が愛読していた「後宮小説(著:酒見賢一)」の影響を多分に受けている。作品は表紙絵も含め全てモノトーンで作画され、登場人物の色彩設定が基本的に存在しない。
また、作者の趣味や日常の出来事を題材に、本編の台詞を差し替えた1P漫画が副産物として掲載されている。それによると雑誌掲載時点で500ページほどのストックがあり、定期的に更新しつつ追加分を執筆しているとのこと。

あらすじ

千年前、架稟(カヒン)大平原の北西に降り注いだ「毒の雨」は、河や湖、地下水を経て大地の全土に広まり、そこで暮らす零氏(レイシ)族の人々に甚大な被害をもたらした。
零氏族の国である爾江陀(ジェダ)皇国の合紫帝は、父親であった先皇帝を殺害し皇位を簒奪した後、山脈に囲まれ「毒の雨」による被害を免れた禰普來(ネフライ)自治区の清浄な地を零氏族のものとするべく侵攻を開始する。
禰普來の桃氏(ペルシ)族であった柘榴(ガーネ)は、故郷の虞江斜(ゲーサ)村を追われ、皇軍に殺害されそうになるも、同じ桃氏で「雨降らしの御使い」であった光彩(ラスター)に救出され、爾江陀にある秦那(シンナ)疎区の秘密基地で生活することになる。そこでは皇軍から迫害された零氏族が桃氏族と分け隔てなく寝食を共にしていた。やがてとある一件から自身も「雨降らしの御使い」となった柘榴は、民族間の戦争とその背景にある壮大な計画に翻弄されていく。

登場人物

柘榴(ガーネ)
本作の主人公である桃氏(ペルシ)族の少女。一人称は「私」。故郷の虞江斜(ゲーサ)村を追われ、皇軍に殺されかけたところを光彩(ラスター)に救出された。
先端の尖った短髪であることから少年と間違われることがある。自身を救ってくれた光彩に淡い恋心を抱いている。山育ち故、視力が非常に高い。
救出された後は怪我の治療をしてくれた祢莉(ネリ)と良き友人となるが、祢莉が土の毒による腫瘍の悪化で命を落とした際に何も出来なかったことから己の無力さを痛感し、仲間を護るための力を強く欲するようになる。その後爾江陀(ジェダ)へ亡命してきた岱沙(タイシャ)猊下一行を保護すべく皇軍と対峙した際に、天烈南(テレナム)から渡された符号符を装着し、「雨降らしの御使い」となった。
普段は裸足で行動しているが、芙柚沙(フューシャ)の住む雲抜塔(クラウドタワー)に赴く際は、土の毒の影響を受けないようにと芙柚沙に貰ったブーツを履いていた。
光彩(ラスター)
禰普來(ネフライ)の科学者であった桃氏(ペルシ)族の青年。一人称は「ぼく」(目上の者に対しては「私」)。秦那(シンナ)疎区にある秘密基地の年長者の一人。
禰普來内地の仙境庭園(ヘヴンズガーデン)にて芙柚沙(フューシャ)博士の助手として働いていたが、芙柚沙失踪の際、他の科学者とともに捜索隊を結成し爾江陀(ジェダ)へ下ったところ、巡回兵に襲撃され唯一の生き残りとなった。その後天烈南(テレナム)に救助され、以降秘密基地で生活することになる。
天烈南が所有していた符号符の1つを受け取り、符号符の仕組みを解明するという名目で自ら実験台として「雨降らしの御使い」となる。物語冒頭において、柘榴(ガーネ)を射殺しようとしていた皇軍兵の腕を御使いの槍で斬り落として失血死させ、柘榴に手当を施した上で秘密基地へと連れ帰った。通常時の身体能力は然程高くなく、基地の子供達の遊び相手をする際には頻繁に転倒している。
禰普來の内地生まれで髪色が薄いため、呉留土(ゴルド)の市場に赴く際は桃氏と気付かれないよう墨粉を使って染髪している。爾江陀皇国の九里(クリュ)護将と内通しており、呉留土の市場にて爾江陀の孤児達を秘密裏に引き取っては保護している。
爾江陀の土壌再生施設である仙境模球(ヘヴンズスフィア)にて研究員として在籍していたことがある。
御使いになってからは「善意で他人を救った後の代償が大きすぎる」として、符号符の力を自分と周囲の僅かなものを護るためだけに使っていたが、柘榴と天烈南の補給部隊襲撃作戦を機に「手を差し伸べなかった場合の後悔は、善意で他人を救った後の代償よりずっと重い」と考えるようになり、合紫帝の符号符性能試験による虐殺を阻止すべく、単身玖夫(クォツ)村に潜入することを決意する。腰まで伸びる長髪が特徴で中性的な容姿をしており、玖夫村に潜入した際は、桃氏の女性の亡骸から民族衣装を拝借して女装し、捕虜に扮していた。
符号符性能試験のための試戦開始直後には御使いの姿に変身し、御使いの槍を合紫帝に投擲して試戦を中断させた。その後暗殺の意図がないことを伝え、合紫帝との対話の席において「仙境模球(ヘヴンズスフィア)による土壌浄化技術がありながら禰普來への侵攻作戦を進める矛盾」を問い質すも、差し出された盃に眼前で毒を盛られ、矛盾に対する回答と試戦の停止を条件に毒杯を飲み干すよう選択を迫られる。
祢莉(ネリ)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少女。一人称は「私」。膝下まで伸びる長い髪を2本の三つ編みにしている。父親が徴兵を拒否したため皇軍に家族を殺害され、自身も命辛々逃げ延びたところを天烈南(テレナム)に助けられた。秘密基地に運び込まれた柘榴(ガーネ)を介抱し、回復後は秘密基地での仕事を教えていく過程で柘榴の良き友人となる。基地では主に農作物の栽培を担当している。
土の毒に侵されており、柘榴が秘密基地に来て間もなく頭部の腫瘍が肥大して病室に隔離されるも、治療の甲斐なく帰らぬ人となった。死因は肥大した腫瘍に気道が圧迫されたことによる窒息死だった。彼女の死によって柘榴は土の毒による爾江陀(ジェダ)の惨状を知ることになる。尚、死後も幻影となって柘榴の前に幾度となく姿を現している。
天烈南(テレナム)
爾江陀(ジェダ)皇国に仕えていた元軍人。一人称は「おれ」。炳李(ヘイリ)狩将の弟で、兄と同じく登楼富(トロープ)に師事していた。炳李とは髪形、体格、鼻の形こそ違うが眼と眉の形は同一であり、この設定を利用して後述の呉留土(ゴルド)の暴動の主犯があたかも天烈南であると読者に誤認させるような演出方法が採られている。
在軍時は著名な功績により兄の炳李を抑えて出世し、合紫帝より符号符を授与されたが、土の毒や飢えに苦しむ自国民を全く顧みることなく徴兵と軍備増強を進める合紫帝に不満を爆発させ、合紫帝の持つ残り2枚の符号符を奪い皇軍を離反した。秦那(シンナ)疎区にある秘密基地の年長者の一人。皇軍や合紫帝に非常に強い敵愾心を持ち、秘密基地を襲撃する皇軍兵に対しては一切の慈悲を持たず惨殺している。
常に顰め面であり、粗野な言動と筋骨隆々な体格も相まって近寄り難い印象を与えがちだが、秘密基地で暮らす仲間のことは肉親のように想っている。
爾江陀に亡命した岱沙(タイシャ)猊下一行を追跡する皇軍兵を迎撃するにあたり、柘榴(ガーネ)の覚悟を見極めるべく符号符を渡した。
芙柚沙(フューシャ)
禰普來(ネフライ)の科学者であった桃氏(ペルシ)族の女性。一人称は「あたし」。毛先のカールした長髪を後頭部でシニヨンとポニーテールにしている。禰普來内地の仙境庭園(ヘヴンズガーデン)にて岱沙(タイシャ)猊下の下で自然科学研究に従事していたが、ある時単身で地質調査に行くと言い研究所から失踪する。その後爾江陀(ジェダ)の怜毘(レピ)死区にある雲抜塔(クラウドタワー)を拠点に、孤児たちを保護しつつ盗賊として生計を立てていることが明らかになる。秦那(シンナ)疎区にある秘密基地へは頻繁に物資の差し入れに来ており、芙柚沙を捜索しに爾江陀へ下った光彩(ラスター)ともその縁で再会した。但し禰普來を抜けた理由については最後まで語ることはなかった。
作中では皇軍の巳華(ミカ)工区への補給物資を強奪するために秘密基地を来訪するも、夜間に何者かの襲撃を受け背中に重傷を負ったことで計画を断念し、柘榴(ガーネ)と天烈南(テレナム)が作戦を引き継ぐことになった。作戦終了後は捕虜となっていた桃氏を救えずに意気消沈する柘榴に檄を飛ばし、符号符の秘密を知りたければ雲抜塔に来るようにと伝え、秘密基地を後にした。
気が強い典型的な姉御肌で、治療の為とはいえ上半身の裸体を周囲に晒した際も全く気にする素振りを見せなかった。
片奈(ヘンナ)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少女。一人称は「私」。手先が器用で呉留土(ゴルド)の市場で売るための手工芸品を作成している。苓土(レド)の悪戯には手厳しく対応する。眼が半開きで感情の起伏に乏しいが、柘榴(ガーネ)が芙柚沙(フューシャ)に会いに怜毘(レピ)死区に赴く際は人一倍気にかけ、見送り時に桃氏(ペルシ)の御守りである祈祷旗を自作し手渡した。
苓土(レド)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少年。一人称は「おれ」。坊主頭の腕白盛りで、事あるごとに悪戯を仕掛けては片奈(ヘンナ)に怒られている。天烈南(テレナム)を「兄貴」と呼ぶ。母親とは死別している。
太厘亜(タリア)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少年。一人称は「おれ」。おかっぱ頭で後ろ髪を束ねている。苓土(レド)の寝像の悪さの所為で度々被害にあっている。
杼洲(ヒース)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少年。天然パーマ。太厘亜(タリア)とともに見張り役をしていたところ、皇軍に追われる岱沙(タイシャ)猊下一行を発見し、急いで天烈南(テレナム)に伝えようとして梯子を転げ落ちた。
乞斗(コット)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす零氏(レイシ)族の少年。一人称は「ぼく」。基地の子供の中では年長だが比較的臆病な性格。天烈南(テレナム)を「さん」付けで呼ぶ。
仁呂(ニロ)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らす桃氏(ペルシ)族の少年。基地の子供達の中では最も幼く、昼寝の際泣き出して寝付けなかった所を苓土(レド)に連れられ岱沙(タイシャ)猊下の元を訪れた。猊下に抱かれ泣き止んだ後は、よく眠れるようにと香り袋を手渡され、苓土とともに昼寝に戻って行った。猊下は彼の一族が、亡命した自分を追って爾江陀(ジェダ)に下った際に皇軍に殺害されたと推測しており、一刻も早い亡命政府の立ち上げの為にと主玲逗(スレイズ)に宝珠を託すことを決意した。
玲起(レイキ)
光彩(ラスター)が呉留土(ゴルド)の市場から引き取ってきた零氏(レイシ)族の少年。玖夫(クォツ)村出身であり、土の毒に侵されていたため秘密基地に到着後間もなく死亡し、光彩に埋葬された。光彩は柘榴(ガーネ)達の補給部隊襲撃作戦に反対していたが、彼の死を切っ掛けに考えを改める事になった。
麻留(マール)
秦那(シンナ)疎区にある秘密基地で暮らしていた子供。名前のみの登場であり、性別、容姿、氏族等は不明。祢莉(ネリ)の亡くなる1ヶ月前に、同様の症状で死亡している。
岱沙(タイシャ)
亡命政府を立ち上げるべく主玲逗(スレイズ)とともに爾江陀(ジェダ)に下った禰普來(ネフライ)の最高指導者。一人称は「私」。皇軍に追われ、秦那(シンナ)疎区にある秘密基地に差し掛かったところで天烈南(テレナム)と柘榴(ガーネ)に助けられる。以降は秘密基地に身を寄せ、基地の子供たちと寝食を共にする。従者である主玲逗(スレイズ)を呼びつける際は携帯式の小太鼓を打ち鳴らす。僧院での厳しい修行時代にはソルフェリノという人物からの励ましで幾度となく心を救われており、その面影を芙柚沙(フューシャ)に重ねていた。
主玲逗(スレイズ)
亡命政府を立ち上げるべく岱沙(タイシャ)猊下とともに爾江陀(ジェダ)に下った禰普來(ネフライ)の僧。一人称は「私」。皇軍に追われ、秦那(シンナ)疎区にある秘密基地に差し掛かったところで天烈南(テレナム)と柘榴(ガーネ)に助けられる。以降は秘密基地に身を寄せ、基地の子供たちと寝食を共にする。猊下以外に対しては極めて排他的な性格。双子の弟の不玲逗(フレイズ)を双僧会から追放した。岱沙猊下に付き添う目的は、猊下の言動や癖を悉く記録して来生の猊下を見つけだすことの手掛かりとし、発見した際に猊下の宝珠を手渡すことであったが、亡命政府立ち上げの早期実現に当たって宝珠の神通力により直接猊下を守護する事を提言し、最終的には猊下の宝珠を託された。
不玲逗(フレイズ)
禰普來(ネフライ)の潜伏僧兵の長。双僧会の一員だったが主玲逗(スレイズ)に追放される。一人称は「おれ」。焼き討ちした虞江斜(ゲーサ)村に雲抜塔(クラウドタワー)の二号機を建築していた皇軍を急襲するも、登楼富(トロープ)に射殺された。
合紫帝(ごうしてい)
爾江陀(ジェダ)皇国現皇帝。一人称は「余」。「解せぬ」が口癖。右目は前髪によって常に隠れている。符号符を所有し「雨降らしの御使い」に変身できる。先帝である父親を殺害し皇位を簒奪した後、零氏(レイシ)族を纏め上げ軍備を拡張し、禰普來(ネフライ)への侵攻作戦を実行する。桃氏(ペルシ)族を異常なまでに嫌悪し、自国の孤児ですら符号符の性能試験に使い捨てるなど冷酷無比な性格。
炳李(ヘイリ)
皇帝に仕える幕僚の一人。狩将の肩書を持つ。一人称は「おれ」(目上の者に対しては「私」)。天烈南(テレナム)の兄で、弟と同じく登楼富(トロープ)に師事していた。軍を離反した天烈南を「裏切り者」と呼び、度々秦那(シンナ)疎区にある秘密基地に兵士を差し向けている。在軍時に自身を差し置いて出世し、符号符を授与された天烈南に対し激しい嫉妬と劣等感を抱いている。将軍という立場にありながら時に己の感情を優先して行動する場合があり、天烈南からは「感情だけで動くバカ」、胡琥(ココ)からは「腰抜け」、真戸(マルト)からは「恥ずべき奴」との辛辣な言葉を向けられている。
玖夫(クォツ)村における合紫帝の符号符性能試験の後、巳華(ミカ)工区にて一部の皇軍兵と桃氏(ペルシ)の捕虜を扇動して反乱を起こし、呉留土(ゴルド)の市場にて買収に応じない商人たちを虐殺した。
九里(クリュ)
皇帝に仕える幕僚の一人。護将の肩書を持つ。一人称は「ぼく」。爾江陀国民の惨状を憂い、救済案を度々提案するも全て却下されている。光彩(ラスター)と内通しており、呉留土の市場にて秘密裏に保護した爾江陀(ジェダ)の孤児達を引き渡している。武器は二本の柳葉刀で、二刀流剣術で使用するほか投げナイフの要領で投擲することもある。普段は物腰穏やかで温厚な性格であるが、呉留土(ゴルド)の市場で発生した暴動に駆け付けた際は、反乱を起こし虐殺行為を繰り広げた炳李(ヘイリ)に対し嘗てない程の怒りを顕わにしていた。虐殺の阻止と柘榴(ガーネ)の保護の為に炳李の軍隊と交戦するも、現場に乱入した天烈南(テレナム)との三つ巴の戦闘となり、最終的に自身の刀で腹部を貫かれ戦死した。
胡琥(ココ)
皇帝に仕える幕僚の一人。刑将の肩書を持つ。一人称は「私」。膝まで届く長髪を一本の三つ編みにしており、時に鞭のように攻撃に使う。皇宮から引き抜かれた宮女であるが、本人の意志により皇后ではなく幕僚として合紫帝に仕えている。真戸(マルト)の管轄から外れた老兵を「雨降らしの御使い」に対する捨て駒にしようとする合紫帝の計画に対して異を唱え、巳華(ミカ)工区での仕事を与えた。端麗な容姿故に、部下達から性的な視線を向けられることがある。
真戸(マルト)
皇帝に仕える幕僚の一人。滅将の肩書を持つ。常軌を逸した巨体の持ち主。
登楼富(トロープ)
永璃(エイリ)に仕える老人。一人称は「わし」。小柄な体躯ながら飛来する矢を目視せずに素手で掴むなど、極めて高度な身体能力を有する。天烈南(テレナム)と炳李(ヘイリ)の師。作中では珍しい、メタ発言をするキャラクター。元は合紫帝の護衛を担う近衛兵であったが、合紫帝が符号符により御使いの力を得たことから用済みとなり、現在は永璃(エイリ)の護衛や伝令役を務める。雲抜塔(クラウドタワー)の二号機を建築中だった虞江斜(ゲーサ)村にて、禰普來(ネフライ)の潜伏僧兵の襲撃を受けた際は永璃を護衛しつつ戦闘を指揮し、最終的に潜伏僧兵の長であった不玲逗(フレイズ)を射殺した。その後、場に居合わせた柘榴(ガーネ)を手刀で昏倒させ、仙境模球(ヘヴンズスフィア)のある迩都(ニト)まで移送し、永璃に面会させた。その後は特に追手の命を出すこともなく柘榴を見送った。
永璃(エイリ)
迩都(ニト)にある土壌再生施設である仙境模球(ヘヴンズスフィア)の所長。一人称は「私」。おかっぱ頭で後ろ髪を2本束ねている。白衣にミニスカートを着用し、待たされることが嫌いなやや情緒不安定な性格の持ち主。かつて光彩(ラスター)とともに研究所で働いていたが、光彩の失踪により光彩が禰普來(ネフライ)と内通して研究内容を横流ししているのではと懸念し、拉致した柘榴(ガーネ)が光彩の天珠を持っていたことから、彼の行方を詰問していた。その後光彩の疑惑が晴れてからは皇軍に知らせることもなく柘榴を見送った。
ソルフェリノ
禰普來(ネフライ)最高指導者の岱沙(タイシャ)猊下が修行僧時代に世話になったとする自然科学者。符号符を盗み出したことから潜伏僧兵に敵視されている。
ソルフェ
芙柚沙(フューシャ)が面倒を見ているの孤児の少年。一人称は「ぼく」。先天性の畸形で頭頂部に第3の眼があり、普段は頭巾で隠している。不可抗力とは言え芙柚沙を殺害した柘榴(ガーネ)を許さないながらも信頼していると言い、月光散の効能、自身や仲間達が畸形を患っていることや禰普來(ネフライ)の僧侶が彼等を拉致していること等を柘榴に伝えた。
リノ
芙柚沙(フューシャ)が面倒を見ているの孤児の少女。頬に赤丸がある。後天性の畸形で腹部に無数の瘤状の腫瘍がある。柘榴(ガーネ)との別れ際に月光散を手渡した。
武器売り・薬売り
呉留土(ゴルド)の闇商人。小太りの男が武器売り、痩せ形の男が薬売りで常に行動を共にしている。光彩(ラスター)と面識があり、呉留土にて九里(クリュ)護将から孤児を引き受けた光彩に、秦那(シンナ)の駐屯兵が爾江陀(ジェダ)へ亡命した岱沙(タイシャ)猊下一行を追跡中であるとの情報を伝え、事が終るまで市場に留まる様忠告していた(その際に暇潰しと称して自分達の商品を商魂逞しく勧めている)。
炳李(ヘイリ)が呉留土で暴動を起こした際は、お狐様に助力を乞うべく危険を冒して怜毘(レピ)死区へと里亜馬(リャバ)を走らせた。その際、芙柚沙(フューシャ)との一戦を経て怜毘から帰還しようとする柘榴(ガーネ)をお狐様と勘違いし、呉留土で発生した暴動の状況や首謀者と思われる人物について説明していた。武器売りの方は倒語を喋ることがある。
荷葉飯(かようはん)売り
呉留土(ゴルド)の市場にて荷葉飯を売っていた老人。目元は編み笠で隠れている。包装に使用する蓮の花を背負っていたところ、花に興味を持って近づいてきた柘榴(ガーネ)に、仏の教えについて蓮の花との関連性を交えて説明した。柘榴のことを「ちびっこ」と呼ぶ。柘榴が桃氏(ペルシ)族だと気付いてからも皇軍に引き渡すことはせず、別れ際に「雨に打たれて売り物にならなくなった」として、柘榴に荷葉飯を手渡した。
迩都(ニト)の村人
仙境模球(ヘヴンズスフィア)の南にある村の農民であり元龍衆。青年と中年の2人組の男性。一人称はいずれも「おれ」。語尾に「~んべ」、「~だべ」を付けるといった典型的な田舎言葉で喋る。迩都での稲作に従事する為徴兵を免れていたが、灌漑に使用する清乍(セルサ)河の分流が皇軍の建造した水門によって堰き止められ、農作業に支障を来していたことから、水門を破壊すべく行動していた。柘榴(ガーネ)に見つかった際、自分たちの行動を皇軍に報告されたかと焦っていたが、柘榴が桃氏(ペルシ)族であり皇軍と無関係であることを知った後は、村を救う為に水門を壊そうとしていることを素直に打ち明けた。当初は川魚を獲ろうとしていた柘榴を罰当たりと非難していたが、雨乞いのために何百回と続けていた龍舞を効果が無いからといって止めてしまった自分たちも同類だとして、別れ際に釣り竿用にと龍舞の操り棒を手渡した。尚、直接的な描写は無いが、柘榴と別れた後に水門の方で銃声が2発響いたことから恐らく皇軍に発見され射殺されたものと思われる。
巳華(ミカ)の伝令
巳華工区より単身里亜馬(リャバ)に乗り、工区の状況を胡琥(ココ)刑将に伝えに来た皇軍兵。全身に原形を留めぬ程の重度の火傷を負っており、目的地到着直後に力尽きて落馬し、巳華工区で起きた爆発事故とそれにより捕虜が一斉に逃亡したことを息も絶え絶えに胡琥に伝えた後に絶命した。その際、爆発事故が何者かによって計画的に実行されたことを仄めかしていた。流血、身体切断、頭部損壊、内臓露出などの描写が多い本作において、最も凄惨な最期を遂げた人物の一人。

地名

架稟(カヒン)
爾江陀(ジェダ)皇国と禰普來(ネフライ)自治区をまとめた呼び名。『閉じた土地』という意味。爾江陀皇国に限っては平原にあるので、架稟大平原という呼び方もある。嘗ては多くの異民族の往来があったが、山脈の関所が閉ざされてからは現在の呼び名になった。文化、風習は中国をモデルとしており、CHINAのアナグラムであるCAHINが由来となっている。
爾江陀(ジェダ)皇国
零氏(レイシ)族の国。平原に様々な民族が流入して興った。千年前に毒の雨が降って以降、衰退の一途を辿る。合紫帝によって統治されている。
秦那(シンナ)疎区
秘密基地がある場所。疎区とは近い将来「土の毒」が回ってくる恐れがあり、退去命令が出されている地域を意味する。天烈南(テレナム)はいずれは人が住まなくなり秦那死区になるだろうと予測している。
怜毘(レピ)死区
毒の雨が降った場所。毒素値が限界突破している。雲抜塔(クラウドタワー)があり芙柚沙(フューシャ)が孤児達と生活している。
巳華(ミカ)工区
軍事工場の密集地区。零氏(レイシ)族の非戦闘員や捕虜となった桃氏(ペルシ)族が武器、防具の製造に従事させられている。玖夫(クォツ)村での符号符性能試験の後、炳李(ヘイリ)の扇動による反乱が発生し、殆どの捕虜が逃亡した。
呉留土(ゴルド)市
物流の中心地。様々な屋台が軒を連ね、食糧や衣類と言った生活必需品の他、武器や弾薬なども入手できるが、食材として土の毒で栽培された米や畸形の魚を使用している場合もあり、また効能の疑わしい聖水などの粗悪な商品も流通している。片奈(ヘンナ)によると閉店間際には屋台の食糧が割引になるという。
炳李(ヘイリ)の反乱により暴動の舞台となり、買収に応じなかった多くの商人が虐殺された。
玖夫(クォツ)村
怜毘(レピ)死区に近い集落。最寄りの河川が汚染され住民は全滅したが、身寄りの無い零氏(レイシ)族や桃氏(ペルシ)族の捕虜が集められ、合紫帝により符号符性能試験の為の虐殺が行われた。
迩都(ニト)
「土の毒」に侵されていない場所。“特区”と付く場合もある。先皇帝の時代に食糧生産の為の直轄地となり、乾燥地帯であるため雨乞いの儀式である龍舞が伝わる。仙境模球(ヘヴンズスフィア)がある。
禰普來(ネフライ)自治区
桃氏(ペルシ)族の国。山岳に囲まれた高地で、毒の雨の被害を免れた。自治区と名が付くが独立した国家である。
仙境庭園(ヘヴンズガーデン)
禰普來(ネフライ)自治区の内地、中心部。汚染されていない清浄な土地。
虞江斜(ゲーサ)村
山岳地帯にある小さな集落。柘榴(ガーネ)の故郷。焼き討ちで消滅した後、皇軍により雲抜塔(クラウドタワー)の二号機が建設されている。
清乍(セルサ)河
禰普來(ネフライ)に始まり、架稟(カヒン)大平原を南北に縦断する大河。多くの分流(支流)がある。作中では第十六分流まで確認されている。

用語

土の毒
毒の雨が大地に浸み込んで残留し続けているため、呼び方が自然に変わったもの。生物濃縮を起こすことから鳥類の排泄物に混じり爾江陀(ジェダ)皇国の広範囲に拡散した。煮沸による消毒は効果が無く、濃度が上昇するため却って危険。即効性は確認されていないが、腫瘍や畸形など多くの奇病、難病の原因となる。
桃氏(ペルシ)
禰普來(ネフライ)自治区に住む民族。仏を信仰する。天珠(てんじゅ)と呼ばれる耳飾りを身に着けている。高地での生活に適応し、総じて視力が高い。
零氏(レイシ)
爾江陀(ジェダ)皇国に住む民族。龍神を信仰する。嘗ては仏を信仰していたこともある。高地に適応できておらず、標高の高い場所では山の病により青白くなって死に至る。
天珠(てんじゅ)
桃氏(ペルシ)族が身に着ける耳飾り。「生きる苦しみを桃源郷へと繋げる御守り」として、生誕の際に性別に関係無く禰普來(ネフライ)の僧侶より授与され、左耳に装着する。仙境大門と同一の材質で出来ており、御使いの槍の穂先で触れると特殊な共鳴音を発する。仙境模球(ヘヴンズスフィア)で勤務する桃氏の研究員は、2本の横線が入った特殊な天珠を身に着けている。爾江陀(ジェダ)で生活する桃氏族は皇軍に気付かれぬよう、外出の際に天珠を隠して行動している。尚、皇軍の捕虜となった桃氏は命と引き換えに信仰を棄てた証として、天珠ごと左耳を切り落とされている。
宝珠(ほうじゅ)
使用することで神通力が得られる法具。禰普來(ネフライ)最高指導者の岱沙(タイシャ)猊下が常時首にかけており、一つだけ珠の色が異なる。最終的に主玲逗(スレイズ)に託された。
祈祷旗(きとうき)
桃氏(ペルシ)族が旅の無事を祈り旅行者に手渡す御守り。刺繍の入った三角形の手旗で、作中では怜毘(レピ)へ赴く柘榴(ガーネ)に片奈(ヘンナ)が自作して手渡した。桃氏族であることの証明でもあり、相手が遠方にいて天珠の有無が確認出来ない場合などに代用することも可能。
秘密基地
秦那(シンナ)疎区にある施設。光彩(ラスター)、天烈南(テレナム)の他、大勢の子供達が共同生活をしている。設備としては、寝室、病室、便所、畑、鶏小屋、里亜馬(リャバ)小屋、納屋、墓地などがある。子供達の間では夜間に便所に行く際は二人以上で行動することが規則となっている。基地内の仕事は当番制を採用する。資金源として手工芸品、編み笠、野菜などが生産され呉留土(ゴルド)の市場で販売されている。
符号符(ふごうふ/コード)
身に着けると“雨降らしの御使い”に変身できる謎の板切れ。表面に符号符の文字が刻まれている。半透明で専用の容器に保管されており、初回使用時は左腕に貼り付け「有効(イネーブル)」の詠唱により発動する。解除の際の詠唱は「無効(ディセーブル)」。使用に関して年齢、性別、国籍、人種、宗派等による制約は存在しないが、1人につき1枚の符号符しか使用出来ない。一度発動すると人体と一体化し、やがて見えなくなる。符号符を取り外すには貼り付いた部分を切除するか、死亡するしかない。全部で6枚存在し、作中では合紫帝、天烈南(テレナム)、光彩(ラスター)、芙柚沙(フューシャ)、柘榴(ガーネ)が所有している。
光彩と天烈南は皇軍に符号符に関する研究者の集団が存在しないこと、符号符の量産化の動きが無いことなどから、符号符が爾江陀ではなく禰普來(ネフライ)で造られたものであると推測していた。
雨降らしの御使い
符号符を装着した人間が変身した姿。禰普來(ネフライ)仏教における仏の卷属であり、摂理を司るとされる。変身と同時に槍と腰帯が具現化し、左目に長方形の透明な枠、左側頭部に三日月状の物体が出現する。芙柚沙(フューシャ)によるとこの姿は迩都(ニト)の龍衆を模しているという。変身後は痛覚が遮断されることで攻撃を受けても怯まず反撃出来るほか、身体能力が劇的に向上し、身長の数倍の高さを跳躍する、銃弾を叩き落としたり素手で掴んで撃ち返すといった離れ業も可能となる。また戦闘以外にもその機動性を活かし、長距離を短時間で移動するなどの応用も効く。一方で、変身を解除した際に蓄積された痛覚信号が一度に解放される、長時間使用による身体的負担が大きく、一対多による持久戦に弱いといった弱点がある。
装着する符号符による基本能力の差異は無いが、槍の穂先の形状が異なっており、作中の使用者と穂先の形状は以下の通り。
柘榴(ガーネ)…Λ型
光彩(ラスター)…Ψ型
芙柚沙…Ж型
天烈南(テレナム)…三日月型
合紫帝…∞∝型
月光散(げっこうさん)
土の毒に対する抵抗力を得られる仙薬。副作用として肉体の不老化が起こる。作中では芙柚沙(フューシャ)の他、怜毘(レピ)の孤児達が服用している。芙柚沙は月光散から不老化作用を取り除く研究を行っていたが実現には至らなかった。服用者が死亡しても薬自体は体内に残留し続ける為、孤児達の間では仲間が死亡した際に火葬後の遺灰を壺に入れ厳重に封印するという手法を採っている。名前は月を食べると不死になるという古代の伝承に由来する。
仏教
禰普來(ネフライ)および嘗ての爾江陀(ジェダ)で信仰されていた宗教。仏を最高神とする。禰普來の科学者の間では、自然科学への理解が仏法の守護に繋がるとされる。禰普來(ネフライ)仏教と爾江陀(ジェダ)仏教では世界観に相違があり、前者が民衆の輪の外に仏と悪鬼が住まうとする単元世界であるのに対し、後者は仏と悪鬼と民衆が全て一つの輪(世界)の中にあり、それが信者の数だけ無数にあるとする多元世界である。
尚、現実の仏教においては泥水から可憐な花を咲かせる蓮を仏の智慧や慈悲の象徴に見立てているのに対し、作中では蓮の花托に無数に空いた種子の穴を爾江陀(ジェダ)仏教の多元世界解釈に準えて説明している。
摂理
禰普來(ネフライ)仏教において、仏が民衆に与えるとされる試練。仏の卷属である「雨降らしの御使い」が司る。桃氏(ペルシ)族の間では天罰ではなく仏の思惟であり、桃源郷へ行く為の喜ばしい試練と見做されている。
龍神
皇帝を象徴する霊獣であり水神。爾江陀(ジェダ)皇国において零氏(レイシ)族に広く信仰されている。千年前、爾江陀の大地に毒の雨を降らせたとされる。
龍舞(りゅうまい)
迩都(ニト)に伝わる雨乞いの儀式。様々な材料を用いて龍を模した張りぼてを作成し、龍衆と宝珠衆によって月を追い求める龍神を再現する。
龍衆(じゃしゅう)
龍舞において龍を操る集団。雨雲を模した黒色の鉢巻きと雷光を模した金色の腰帯を身に纏う。
宝珠衆(ほうじゅしゅう)
龍舞における先導役。月を模した宝珠を操る。龍衆が複数名で龍を操るのに対し、こちらは一人で担当する。
皇軍
爾江陀(ジェダ)皇国における正規軍。一般兵は甲冑に身を包み、小銃を武器とする。将軍などの高位の人物の左頬には、Λを縦に3つ重ね、中央に縦線が入った赤色の刺青が与えられる。作中で刺青を持つのは天烈南(テレナム)、炳李(ヘイリ)、胡琥(ココ)、九里(クリュ)、真戸(マルト)、登楼富(トロープ)の6名。
お狐様
呉留土(ゴルド)の市場における芙柚沙(フューシャ)の渾名。商人からはこの名で恐れられている。
雲抜塔(クラウドタワー)
怜毘(レピ)死区にある塔。芙柚沙(フューシャ)が孤児達と共に暮らしている。その正体は今から千年前、雲の中に薬品を打ち込んで毒の雨を降らすために建造された施設であり現在は稼働していない。塔周辺では土の毒を中和すべく、芙柚沙達によって広範囲にレンゲソウが植えられている。虞江斜(ゲーサ)村では皇軍により二号機が建設されている。
双僧会(そうそうかい)
謎の組織。不玲逗(フレイズ)がかつて所属していたが、主玲逗(スレイズ)に追放された。
潜伏僧兵
禰普來(ネフライ)周囲の山岳地帯において爾江陀(ジェダ)皇軍の侵攻から本土を防衛する兵団。禰普來の僧侶で構成され、不玲逗(フレイズ)が隊長を務める。皇軍からは禰普來侵攻作戦における最大の障害の一つと見做されている。遊撃戦に特化し、鎧兜等の防具は装備せず、弩による遠距離からの狙撃を主戦法とする。虞江斜(ゲーサ)村にて雲抜塔(クラウドタワー)の二号機を建設中だった登楼富(トロープ)の部隊に対し奇襲を仕掛けるも、場に居合わせた永璃(エイリ)を宿敵であるソルフェリノと誤認したことから、各隊員が独断で本来の戦法ではない接近戦を展開し指揮系統が混乱。最終的に不玲逗が登楼富に射殺され、隊は壊滅した。
仙境模球(ヘヴンズスフィア)
迩都(ニト)にある土壌再生施設。永璃(エイリ)が所長を務める。広大な敷地内にドーム状の建造物が複数あり、室内でありながら草木、河、滝といった自然環境が再現され多くの動植物が生息している。軍属の人間の施設内への立ち入りは永璃によって厳しく規制されている。爾江陀(ジェダ)にある施設であるが禰普來(ネフライ)産の里亜馬(リャバ)が飼育されている。研究員は零氏(レイシ)族と桃氏(ペルシ)族の混成で、かつて光彩(ラスター)も研究員として在籍していた。永璃によれば研究所内の動植物は禰普來のある人物によってもたらされたとのこと。
仙境大門
禰普來(ネフライ)の南東に位置する黒色の砦。周囲を急峻な山脈で囲まれた禰普來自治区において、零氏(レイシ)族の人間が高山病に侵されることなく通過可能な唯一の場所であり、禰普來防衛の要所。極めて堅牢で、真戸(マルト)率いる部隊が火薬庫一つ分の爆薬を用いても僅かな欠片しか得られなかった。一般の零氏の間ではあまり知られた存在ではなく、「龍神様の風呂桶」や「龍神様の枕」と言った俗称も見られる。
里亜馬(リャバ)
架稟(カヒン)では一般的な家畜。爾江陀(ジェダ)産と禰普來(ネフライ)産の2種が確認されている。爾江陀産ものは外見が不細工で、体力が劣り山脈などの高地を超えることが出来ない。また、人語を解するような描写があるほか、疲労困憊や満身創痍の際に口から幽体離脱したり、人間の様に落涙したり、故障したファービー人形の様に鳴くなどコメディリリーフとしての描写もある。爾江陀では「駅」と呼ばれる、里亜馬の貸し借りや休息に使用される施設が随所に存在する。禰普來産のものは爾江陀産と似ても似つかぬほど優美な外見で、大きな瞳と長い耳を持ち、人間を乗せたまま滝から飛び降りて着地するなど強靭な足腰を持つ。主に荷役や騎乗に使用されるが食用にされることもある。

歴史

  • 2019年8月12日、掲載開始。